活動報告

竜ケ崎市役所で市長・幹部職員へ市民参加予算のプレゼンを行い、意見を交換しました

平成28年11月7日、茨城県龍ヶ崎市役所を訪ね、市民参加予算についてプレゼンを行いました。
龍ヶ崎市は茨城県南部、東京の北東約50㎞、筑波研究学園都市の南約20㎞、成田新東京国際空港の北西20㎞に位置しており、人口は78,000人、世帯数33,000です。

当日は、中山一生龍ヶ崎市長をはじめ、市長公室長・財政課長・企画課長・市民協働課長といった市幹部にもご出席いただきました。
兼村高文教授より、厳しい地方自治体の現状と改善方法、市民予算の歴史と成果、諸外国の事例報告、日本国内での類似事例と成果と課題についてプレゼンを行った後、市長、市幹部から次のような意見をいただきました。

●中山市長
「自治会組織の活動が盛んである龍ヶ崎市では、面白い試みであり、市民参画の一助になればいい」と期待を寄せる一方で、「議会軽視にならないか」と心配する意見もいただきました。
●財政課長
「予算編成のなかで頭を悩ます予算の削減について、どれを削減したら良いかと市民に尋ねてみたい時がある。そんな時の手法として使えないか」と質問をいただきました。
●市長公室長
「市内には、小学校単位の地区コミニティセンターが13ヶ所あり、そこを中心とした市民活動が行われている。また、その活動費として地区で自由に使うことができる予算が、130~360万円(均等割+人口割)交付されている」という現状を説明いただいた上で、「市にはWebモニ(インターネット市政モニター制度)という市民から幅広く、継続的に市政運営に関するご意見をお聞きする制度があり、220人の市民の方にお願いしている」との取り組みについても紹介いただきました。

この様なことからもわかるように、龍ヶ崎市には市民予算を実行できる下地があると推測できると感じました。あとはどの様な手続きで行うか、また職員・市民・議会にどう説明し、納得いただけるかがカギになりそうです。いずれにせよ、新しい取り組みを導入するには首長の強いリーダーシップが期待されるところです。

最後に、公務お忙しいところご出席賜りました中山市長はじめ、市幹部の皆様や関係者の皆様方に心から感謝申し上げます。

(写真)市長室にて撮影:中山市長(左から2番目)、兼村教授(左から3番目)、兼村研究室の学生(両端)

 

韓国調査 その2(国立公州大学校でシンポジウム)

2016年9月5日(月) 午後

午後からは国立公州大学校にてシンポジウムが開催されました。このシンポジウムは、国立公州大学校 公州学研究員と明治大学市民ガバナンス研究所による共催、NPO法人市民ガバナンスネットワークが後援する形で開催され、多くの公州市民が参加しました。

シンポジウムは、市民サークルから歓迎の詩の朗読、オカリナ演奏、出席した大岡敏孝 衆議院議員からの挨拶、兼村教授、忠清南道国際専門チーム長 洪萬杓氏の講演の後に市民からの質疑応答が行われ、盛会のうちに幕を閉じました。



大岡敏孝衆議院議員あいさつ
日本と百済の交流から約1400年、長い歴史を経て今では日韓は友である。日本と百済の歴史に由来する交流は、現在も日韓各地で盛んに行われている。日本と百済の交流を基礎とし、これからも日韓の友好を深めていきたいとシンポジウムに参加した公州市民と兼村研究室の学生にあいさつしました。

兼村教授講演(市民参加予算)
政府への不信感、政治への無関心等から選挙の投票率低下は世界的なトレンドである。世界は民主主義の危機と呼べる状況に陥っている。市民参加予算(韓国では市民参与予算が法的名称)は政治・行政に重要な役割を占める予算を、市民の参加と討議により決定する直接民主主義的手法であり、選挙による間接民主主義を補完する制度である。
1989年にブラジルのポルトアレグレ市で始まったこの制度は、現在では世界約2500の地方政府(自治体)で採用されており、世界各地で関心が高まっている。採用例として、アメリカ・ニューヨーク市(公共事業)、カナダ・トロント市(公営住宅共用部分の使用、管理)、イタリア・各市(エコ)等。韓国は国が法令で全自治体に実施を義務化したことが特徴。日本での採用事例はない。千葉県市川市が市民税の1%をNPO、ボランティア団体への支援に当てることとし、その支援先を市民が決められるという取り組みを行っていた。似ている仕組みではあるが、市民参加予算とは少し違う。
市民参加予算のメリットは、1市民が予算の仕組みを理解する事で、政策決定の透明性が高まる、2政治・行政と住民の対話、協働の手段として有効、3住民間の討議により住民の自治意識が向上。
デメリットは、1制度を理解、関心を示す住民がまだまだ少ない、2参加者に偏りが出る可能性、3間接民主主義との調整、位置付けが未定。

質疑応答(どちらも韓国の方が日本語で質問しました)
問1:市民参加予算は、間接民主主義メインから直接民主主義メインへシフトする前触れとも言える取り組みではないか?
答1:市民参加予算はあくまで間接民主主義の補完である。間接民主主義を否定するものではない。
問2:韓国は中央集権国家なので、自治体の自主財源が僅かである。地方分権を進め、財政の自主性を強化しないと市民参加予算の効果が得られないのではないか?
答2:中央集権と地方分権のどちらが望ましいかは、財政だけでは語れないので一概にいえない。世界的なトレンドでは民主主義の浸透、経済の発展が進むほど地方分権にシフトする傾向にある。韓国も今後そのような流れに向かうのではないか。自治体の自主性には、1財政の自主性と、2行政の自主性がある。市民参加予算では、1の使える予算の額も重要であるが、自治体には自ら政策を決定し、実行していく2の力が特に重要である。住民の参加と討議があり、それを実行に移せる行政能力があれば、少ない予算でも効果が得られる。

洪萬杓氏講演(民際外交)
洪氏は、忠清南道の国際専門チーム長として幅広い人脈と精力的な活動から「地方行政の達人(国際部門)」として韓国政府に認定を受けている他、日本でも、親善大使として自治体(静岡県)の委嘱を受け、(国家が行う外交に対し)「民際外交」を推進、日韓交流に尽力されている方です。
講演で洪氏は、国と国との付き合いでは、一つの対立点で歩みを止めるのではなく、他の共通点を見い出すことで共に前へ進むことが重要であるとし、民際外交はそのチャンネルの一つとして役割を果たすことができると、自治体レベル、個人レベルでの交流の重要性について述べました。

シンポジウム後は場所を移し、懇親会にて交流を図りました。

なお、当日の様子は翌日の地元紙に掲載されました。
特急ニュース  http://m.expressnews.co.kr/news/articleView.html?idxno=85527

忠清新聞  http://m.dailycc.net/news/articleView.html?idxno=318381

 

韓国調査 その1(公州市庁で市民参与予算についてヒアリング)

2016年9月5日(月) 午前

兼村研究室一行はこの日午前、公州市庁を訪問しまし、副市長室にてユ副市長の歓迎を受けた後、予算担当課長の説明を受けました。
公州市の市民参与予算制度は、2011年に条例が制定され、本格的に予算が組まれたのは2015年とまだまだ新しい制度です。

ヒアリングの概要
対象:市財政の14%である自主財源のうち、少額(200万円程度)の事業。事業は、1住民提案事業、2、地域委員会決定事業、3予算要求審査事業の3つに分類される。
参加者市民:46人の市民からなる本委員会(市全体の事業)と16地区363人の市民からなる地域委員会が使い道を決める(対象事業を選定する)。なお、公州市の人口は約11万人である。
実績:2015年度は568件38.7億円の事業を市民参与予算制度で決定した(公州市の2015年度予算総額は673.4億円)
課題:公州市が認識している課題としては、1まだまだ市民の関心が低い、2市民からの提言はあるが、市民参与予算の限度額では対応できない提案が多い(有用な提案は中長期計画等、別の形で対応する)、ということであった。
兼村教授は、1公募に応じる市民が少ないとメンバーが固定化するおそれがある(任期は2年で再任可能)、2行政主導の側面が強い、という点を指摘し、運用が始まって間もない制度が市民の参加により機能していくよう取り組む必要があると意見を述べました。

韓国調査を実施しました

2016年9月4日(日)から6日(火)の行程で、大韓民国忠清南道公州市での調査を実施しました。

忠清南道公州市はソウル特別市の南方約125km、ソウルからKTX(韓国高速鉄道)で1時間半ほどの距離に位置しています。
 面積は940.71㎢、人口は約11万人の都市で、古代には百済の都として繁栄しました。2015年には百済の遺跡群が「百済歴史地区群」としてユネスコ世界遺産に登録された他。百済を通じた日本との交流も盛んに取り組んでいます。

公州市Webサイト(日本語) http://www.gongju.go.kr/japanese.do

今回は、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科 兼村研究室の学生と共に、公州市庁で「市民参与予算制度」の実態について市担当にヒアリングを行った他、市内の国立公州大学校で、国際協力と市民参加についてシンポジウムを開催し、市民との意見交換を行いました。